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    西 瓜
   
  うちゃ面白かったもんの、お父っつぁんとばばさんが西瓜好きで、お祖父っつぁんとおっ 母さんが、「どうでんよか、食べんでんよか」ぐらいじゃったもん。

そっで何時でん、ばばさんの西瓜時になっと「栄さん、いっちょどーじゃろかのー」ち云い なさっと、お父っつぁんの「ほんにいっちょ食べまっしゅか」で、すぐ西瓜になりよったが、 お祖父っつぁんにそげん云いなさったっちゃ「俺あどうでんよかー」ちどん云いなさるし、 お母さんに云いなさったっちゃ、おっ母さんなちーった衛生派の方じゃけん「サーあんまり 食べたなら、いきますめーもん」式で西瓜はあがるときでん、滓出してあがるけん、あたし も滓出す癖んついとったたい。

  夜だん果物どん食ぶっとは、ほんに身体に悪るかごつ云よんなさったけん、山本へんに行 くと、夜でん冷めとう冷やした西瓜どん、みんなあがるけん、よさり冷えた西瓜食べてよか じゃろかち、ちった、えっさえっさでどん頂きよった。夏の暑か夜に冷えとる西瓜は、頂きゃ おいしかもん。

西爪ちゃ、そげなふうで、ばばさんとお父っつぁんの思い立ちでいつでん始まりょったが、 次の者もいつでん一緒に食べよった。そーすと清太郎ち居ったつの西瓜の食べ方ん早さち云 うたなら、食べながら片方の口の隅から種ばポローン、ポロン落すもん。
そりば見て作次がどんどん笑い転げよるもん、おかしかち云うて。そっで自分ななあにん食 べ出さんもん。笑うこつばかり笑うて、外の者達に食べられて仕舞よった。

  作次ちゃ、佐平次とお松の子であたしと一つか二つちがいで、ほんに学校の良う出来るけ ん先生の高等小学さん入れてやんなさいちすすめなさったけん、高等さん入れて、そりから また師範さん入れたたい。

休みで帰って来るといつでんうちさん来て勉強しよった。夏休みだんうちに居るとどげん暑 か時でん大っか樹のあるけん、汗もよう出らん位涼しかりよった。
格子の間にどん机置いて勉強しよったたい。学校出て先生になって嫁さんどん貰うたりゃ胸 ん悪うなって死んだたい。長生きしとりゃ校長さん位にゃなっとっつろに、お松ばばやいも 苦労せんでよかっつろばってん。


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