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    女学校ー校舎
   
  校舎は東の方にヨの字形に足ば出したこたる恰好に建っとった。南北に長うして。一番北 側の東西に走っとる棟の一番東が作法室、その西が裁縫室、南北に走っとる棟と南側に東西 に走っとる棟が教室で、まんなかに東西に走っとる棟が職員室、職員室と南側の棟との間に 小使室か何かがあったごたるばってん、もうあんまり古かこつで忘れとるとこもあるたい。
お玄関な職員室の西側、南北に伸びた棟の真ン中あたりじやった。

  教室は三十年後にアヤが行きよった時と、あんまり変ったこつはなかったが、廊下は土間 じゃった。教室の入口にふみ板の置いてありょって、そこから教室に出入しよった。なんせ 土間じゃけん土ほこりの立ってほんに汚なかった。

  一番南側の校舎のそばに藤棚のあったが、その東側はすぐ隣屋敷で破れた板塀どんがあっ た。そっでん明治三十四年にあたしが卒業して、そりから、一年、間おいて補習科の自由科 んごたるとこに入学した時にゃ、もう中央の職員室のとこは二階建になって、下が職員室て ん何てん二階が講堂になっとったし、それ続いて、一階建の教室も出け、そりから校庭もず っと広うなって、南側の棟が隣屋敷までのうで、そこに雨天体操場も出けとった。隣屋敷の 大樟も学校の庭の樟になっとったたい。


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