安長寺物語・序文

「安長寺物語」の発刊に寄せて


                        住職 平野宗紀

 この度甘木山安長禅寺の歴史、伝承、故事などを集成し、「安長寺物 語」として発刊するに際しましては、多くの方々のご指導とご協力を 賜り、誠に有り難く存じております。
 私が当山に入寺して早十七年になります。入寺当時は荒廃した建物 や、境内の復興に直面して、まず書院を建設し、茶道場として出発し ました。
 安長寺は甘木町発祥の寺ということであり、「安長寺の発展は甘木 市民の発展につながる」と、確信して、努力して参りました。
 おかげさまで、荒廃していた境内の状況も年々整備され、平成三年 三月二十四日には、安長寺檀信徒の皆様の、浄財寄進のお陰を得て、 甘木町発祥のシンボルである山門の修復が完成し、落慶法要を遂行す ることができました。
 この山門修復のことが提案された頃から、檀信徒の間で典籍刊行の ことが話題になってきました。
 皆様方がよくご周知のように、当山は度重なる兵火や町の大火事に 遭遇し、事跡に係わる典籍のほとんどを失い、縁起書および安長寺考 など若干の文書が残されているのみで、千年余にわたる伝承が、散逸 しつつあることを、歎じておりましたところ、檀信徒の方々からも典 籍刊行の発議があり、檀家の一員であり、社会教育や社会福祉の面で 活躍されている林敏弘氏に執筆を依頼しました。林氏は文献資料の検 索、実地検分、職者からの聞き取り調査等を、粘り強く繰り返して、 見事に脱稿されました。この本が刊行されるに際し、心から敬意を表 す次第です。またこの本の刊行に際しましては、資金を寄進された小 川嘉夫氏をはじめ、企画進行に携わられた総代の方々、資料提供や聞 き取りにご協力された方々、印刷、写真など技術を担当された方々の ご支援に対し厚くお礼申し上げるとともに、この本のご利用ご活用を お願い申し上げ、刊行のご挨拶と致します。