産業の振興

現況と問題点

茶つみ風景 そばの収穫

茶つみ風景

そばの収穫

本村の産業は農業と林業である。林地は総面積に対して八八パーセントの七、一九四ヘクタール、耕地は約三・五パーセントの二八○ヘクタールにすぎない。平成二年三月の世帯数六八五戸、人口二三五一人となっている。一九八五年農林業センサスでは、農林業四四五戸、農業就業者数は六四六人となっている。土地所有形態からみれば、零細であるが農業と林業が複合された形で経営が営まれている。

農業は、米、茶を基幹作目として三八八戸の農家が平均耕地面積約○・六ヘクタールのなかで農業生産に取り組んでいる。 なかでも茶については、村と生産者一体となって特に力を注ぎ上質茶の生産ができるようになり、全国茶共進会において農林水産大臣賞の受賞者もでるなど技術的にも向上してきている。昭和六十三年一・ニヘクタール、平成元年一・ニヘクタールと毎年少しずつ茶園造成がなされているが、集団化した造成となると地勢的なことも含め思うように進んでいない。そのため規模の拡大ができずコスト高な面がある。また、本村の茶園は標高約四○○メートルの位置に散在しており、霜害等を受けやすい状況にあり、現に平成二年五月の晩霜により壊滅的被害を被った。その対策も含め茶経営上まだ幾多の問題点が残されている。

米作は、過剰生産が続いているなかで水田農業確立後期対策に入り、平成二年度までは前期対策と同面積が対象となった。本村の場合、転作率は二三パーセント、面積では約二四.八ヘクタールとなっている。水田は棚田が多く、ほ場整備は不可能に近く生産性は低い。しかし、九〇パーセント以上が自主流通米となっており評価を受けている。今後はうまい米、売れる米づくりの奨励と農機具等の共同利用を進め農家負担の軽減を図る必要がある。

村の花として位置づけているりんどうは、現在十一名の生産者によって取り組みがなされているが、質等について今一歩の感がありさらに営農指導が必要であろう。イチゴについては、県内の市場においても高く評価されている。問題は生産の拡大とそのためのほ場整備が今後望まれる。抑制蔬菜等を含めいろいろな作目が生産されているけれども、産地化には程遠い状況であり、生産も伸び悩んでいる。その原因は後継者問題のほかいろいろなことが考えられる。

本村の二十五集落をみてみると農休業センサスでは四五八戸の農家数になっている。しかし、専業農家となれば五十七戸と極めて少ない。集落のなかには高齢者夫婦のみの家庭もあり、後継者のいない農家の五年後、十年後を考えれば耕地の荒廃が考えられる。一方三十歳、四十歳代の年齢層のなかには規模拡大を志向する生産農家もあり、転作田も含めこの二つをいかにして結びつきを作っていくか今後の大きな課題と思われる。そのために、農地の流動化を推進しながら立地条件を生かした農業と取り組み、生産者に夢と希望を持たせることが必要である。

近年は、都市の人たちが農業体験をして農業を理解したいとする志向が特に強くなっており、農場等の確保を図り、体験と交流のなかより都市住民が求めているものを見い出し生産に結びつけていくことが必要と思われる。さらに生産される物に付加価値を高める工夫、施策が必要である。規模拡大にもおのずと限界があり生産性の高いものを多角的に、併せて協業型農業を促進するとともに、流通、販売面の強化を図る必要がある。

林業については、林野面積が総面積の八八パーセントを占めているが、近年の材価の低迷から産業としての林業経営は思わしくない。その原因は、外材の輸入、新建材の開発等により需要が減少しているためである。特に本村の場合、約六割近くが電柱材として供給されていたため、コンクリート柱に変わったことが本村の林業振興を阻害してきたことも事実である。低迷している価格に対して、その生産性を上げるため制度事業を導入して林道開設を行い、生産基盤の充実や経営の近代化に取り組んでいるところである。特に、間伐材等の生産のため森林組合を育成強化し、機材の充実を図り付加価値を高め所得の向上と雇用の促進を図っている。
木材のかわはぎ

材木のかわはぎ

森林保有形態は村外所有者が七割を占め、大きな問題と思われるが、現実にはその対策は見い出せない。林業についても国策によって左右される面があるけれども電柱材についての需要の方策を長期的に検討していく必要がある。

近年、特に世界規模で環境問題が取り上げられ、森林のもつ機能が再認識されている。森林は酸素の供給源として、また、大気の浄化、水資源のかん養等公益的な機能を備え人類にうるおいを与えているが、その機能を果たすためには保護育成が大切で、間伐等により公益的機能を十分果たし得る森林を育てる必要がある。

しかし、今後林業労働者の高齢化が進むなかで、林業従事者の確保は林業施策上最も重要なことになってくるものと思われる。

現在、本村の林道密度は一一・一メートル/ヘクタールとなっているが、生産性を上げるためには道路網の整備が必要であり、既設の林道を広域基幹林道等と接続することにより、より効率を高めるとともに、聞伐作業等の整備を推進していかなくてはならない。

昭和五十二年、五十三年度に建設された高齢者生産活動センターにおける木工芸品生産については伸び悩んでいる。村の特産品として位置づけていくためには、さらに付加価値をつけた商品の開発が急務となっている。