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    アヤ出生、ヨシ出生
   
  四十五年にやアヤが生れた。生れそうじゃけん街の産婆さんに男が走って、産婆さんな軌道に 乗って来るつもりんとに、一汽車遅れてじゃったげなけん産るっとに問に合わじゃったたい。 ほんにちよーいと生れたけん。ちょーいと生れたっあよかったが、乳の呑み方のわからんとじゃ リ、あんまり早よ生れたけんつかれたもんじゃリ、一向乳呑ましうでちしたっちゃ、乳首ば吸 わんもん。

ばばしゃまと、おばやいとで、心ぼう強う綿とガーゼで乳首作って、それに乳しませて、口の 中に押込み、押込みしてやりょんなさったが、ようよう何日目かに、ちっとずっ吸い込むごつ なったたい。ばばしゃま達の辛抱強うしてやんなさらじゃったなら乳吸はんなりで死んでしも とったかも知れんばい。

  名は綾ちつけたたい。何かの本にほんに美しうして、心懸けのよか娘の名がお綾ち云いよった けん、そげな娘になるごつち思て附けたが、思たこつの裏目に出たつじゃろたい。お転婆で お転婆で・・・・。

  大正二年にはヨシが生れた。こっちもお産な、かるかったし日立も順調で後からも心配せにゃ んごたる病気もせんでそだったたい。名はヨシヨシでヨシがよかろでヨシちつけたたい。


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