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    ご祝儀やり直し
   
  あたしが赤痢わづろうた時、おっ母さん方(がた)の仲立で、ばばさんのお里に、おっ母さ んのお里から、ますしゃんのお入るごつなっとったが、あたしがそげな病気したけんどっだけ かご祝儀ゃ延うだらしかった。

  あたしゃご祝儀見たこつんなかったもんじゃけん、見らるるちうて、楽しうどったたい。そっ で休うどるうちも、まあだご祝儀ゃなかのち云よったけん、ご祝儀ゃ延ばしてあるこつにして あったけん、治ってからも、延うどるち思とった。

  明けの年じゃっつろ、徳童のばばさんのお里におっ母さんと行ったりゃ、遅うなったけん、 いまから行徳(岡野)迄お帰(け)らんでん、泊りなさいち云われて、ご祝儀のあんなら泊 るち云うたけん、そんならご祝儀せじゃこてち、髪さしどんさして、ますしゃんの出て来な さったばってん、そげな事じゃご祝儀じゃなか、着物もそげんとじゃなかち云うもんじゃけ ん、紋付ば打掛けのごつ着なさったりゃ、そげな着方じゃなかち云うたけん、美しう着直し て出て来なさったりゃ、今だ、おごちそのなかち云うけん、お丼てん大皿てんに、蕗てん焼 鮒てんば盛って大っか台にのせて出しなさった。

そっでん賑ゃわんち云うもん、そりから三味線どんがペコンペコン、鳴り出したばってん、 何じゃり、ほんなご祝儀じゃなかごたるもん、どうじゃり違うごつして。

  そうに、あたしも我ままじゃったじゃろの、その話や、いつまっでん、ミチしゃんのご祝 儀のやリ直しち云うて、親類中に評判して笑い話しなっとったたい。


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