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    九郎兵衛さん
   
  笠九郎兵衛さんな其頃の篤農家で色々功労のあったけん村の百姓の首座、長(おさ)百姓に なされて、のち又足軽組の頭役にお取り立てになったげなたい。

  ガン爪ば発明したり、浦川原一帯の砂利藪ば開いて、今の社田辺五丁ばかりもよか田にな さっしやったげな。近頃迄も残っとったあの辺の榎てん何てんの大木も瓦郎兵衛さんの植え てじゃったつげなたい。ごーほん長生きして、うちが国分に来た時分かのうなってじゃった げな。

  おばやいのむこさんが其直系の子孫の二男てろち云うこつで、おばやいから話聞きょった。 村ん者んが九郎兵衛さん方にいろいろなもんば、借りに行くと、その品物がお金だして買 わにゃならん、鍬鎌んごたるもんな心よう直ぐ、貸してやらっしゃるげな。

  そりばってん自分で、手動かして作りゃでくる「ふご」てん、「ねこぶく」んごたるもんど ん借りに行くと、黙っで、つーっと、つしに登って、ふごてん、ねこだてん作る丈けの藁束 ば上から、ドスーンちほり落して、「手いごかしゃ出来る。藁ん無かならその藁ばやるけん作 らさい」ち云いござったげな。


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