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    バナナ、チョコレート
   
  バナナは岡野ん碩伯父つぁんの、東京から帰っておいった時、下関へんから買うておいっ たらしうして、もう皮の黒うなっとるもん、今のバナナの小ぶりんとぐらいじゃん。おっつ ぁんのこうして食べにゃならんち、皮むいて食べて見せなさったけん、そげんして食べたた い。山本にもそん時持っておいったらしぅして珍らしがりょんなさった。女学校に行っとっ つろか、まあだ、御井高等ぐらいじゃっつろか、そん時ゃビンツケんごたるち云よるもんも あったばってん美味しかった。

  チョコレートはくさい、ばばさんの病(いと)うどんなさる時、追分の富安からお見舞に頂 いたもん。上ん段と、下ん段の半分が玉子ぞーめんで、半分な「無二膏」ちうて黒かあかぎ れん薬の初手ありょったたい、その無二膏のごたっとの這入っとるもん。
こりゃ食べられん とんごたるてん云よったりゃ、なんの、そりがチョコレートじゃったつたい。食べたりゃほ んに美味しかった。そん時、お晴しゃんの来て、「大方そりゃ宇美の小林から富安のお嬢 さんば貰らよんなさるけん、そのお土産のはねごしばい」ち云うて笑よんなさった。小林ち ゃお晴しゃんの伯母さん方たい。


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