「玉垂宮賓殿及境内末社記」によば、昔は、寶殿の外、五社八幡、山王七社、風浪権現、天満宮、坂本明神、高牟礼権現、伊勢社、祇園社、朝妻大明神七座、若宮八幡宮、愛宕権現、下宮、王子宮、発心権現、語霊廟、印鑰大明神、豊比�梼ﾐ等が末社として挙げられ、明治中年頃の「国幣中社高良神社絵図」中「境内末社」として風浪社（綿津見神）、五所神社、（肥前千栗、豊前大分、肥後藤崎、薩摩鹿児島、大隅霧島）、真根子神社（壱岐真根子神）、日吉神社（大山咋命）、印鑰神社（高良神社の印鑰）をあげ、「境外末社）として、愛宕神社（字礫山、加具土命）、稲荷神社（字宗崎、倉稲魂命）、御祖神社、（字中谷、伊勢御祖神）、琴平神社（字吉見嶽、大物主命）、鏡山神社（字賀輪、玉垂命の分祖）、味水御井神社（字朝妻、水波能賣命）、水分社（字奥の谷、水分神）「印鑰縣社」として豊比咋�盗_社（字清水、豊玉姫命）、「境外郷社」として高樹神社（字神籠石、地主神）、高良下社（字府中、玉垂命祀）等列記して居る。右の内二、三に就き略記すれば

高良下宮

「高良下宮来歴」に「府中町高良の下宮は本社堂前の御事にして、往古は禁廷よりも御崇敬の趣舊記に相見え候、履中天皇の時初めて御建立」と有り、「玉垂宮境内神社記」に「下宮は神体本地玉垂命なり」とある。元大祝家が奉仕し、玉垂宮神幸の時は下宮にて休まれる舊例であった。征西将軍が本社に立願せられた事は前述の通である。

豊比咋�盗_社

延喜式所載本国大小四座中の一、祭神は神功皇后の御妹豊姫とか、豊受大神とか云われるが、古事記の所謂海神綿津見の女豊玉姫命、即彦日々出見尊の皇妃とする説が有力である。初めは玉垂宮と相殿であったらしく、朝廷よりも屡々御贈位、貞観十一年三月には正四位下（筑後地鑑）を贈られてある。

高樹神社

元は高牟礼神社と云い祭神は地主神と云っていたが高産霊神である。元慶二年（西暦878年）従五位上を授けられ、又正五位に列せられ（本国神名帳）たと云われる。御手洗池の東方に鎮座す。

伊勢御祖神（いせみおや）

本社を距る西方五町、中谷に会って祭神は天照大神である。現在の社は寛文年間（西暦1670年頃）のものであるが、延喜式にも社名は載せられている。豊前香春社・宇佐宮等にも玉垂神社・豊比咋�盗_社と共に三社同所にあるを見れば昔は同一社地内に在ったであろうと云われている。

○

はれ曇り降りみふらずみ神まして　ぬれせぬ山の時雨なりけり